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天高し 金木犀 (秋)

五十にて天命知らず天高し [34]

忘れたき思い出ふいに金木犀 [35] 

 

2017年後半映画メモ(4)

アラン・ドロン特集だよ

アラン・ドロン…絶世の美男子だけど、意外にも男性ファンが多い。彼は暗さとか、冷たさとか、卑しさとか、孤独とか、負のオーラを後光のように出していて、そういうオーラがミーハー女子を威圧し、男が理想とするダンディズムを醸し出しているような気がする。また女子ウケするような映画にもあんまり出てないのよね。

 

 

ジャン=ピエール・メルヴィル『サムライ』,1967年,フランス,DVD

孤高の殺し屋ジェフ・コステロ。暗殺現場を目撃されたことで、警察にも依頼人にも追われることに…。『サムライ』は原題。
アラン・ドロンがとにかくカッコいい映画殺風景な部屋がカッコいい、そんなところで小鳥を飼っているのがカッコいい、殺し屋定番のトレンチコートがカッコいい、帽子のかぶり方がカッコいい、鍵の束がカッコいい、タバコの吸い方がカッコいい、歩き方がカッコいい…。そして、ラストシーンの拳銃が最高にカッコいい(なぜカッコいいかは見てください)。と、まぁメルヴィルは男の美学をこれでもかっーと、ドロンに詰め込んでおります。殺し屋ドロンのカッコよさを伝えるためには、ただの歩くシーンですら延々とカメラが回るのに、ストーリー展開に重要なところは短い数カットですませちゃったりします(笑)。男のカッコよさだけで1本の映画になるのもすごいけど、そんな役ができる俳優も古今東西アラン・ドロンただひとりのような気がする。
あまりにカッコいいので、この映画を真似した監督はたくさんいるけど、こんなところにまで影響力がっ! 片手にピストル~、心に花束~、唇に火の酒~、背中に人生を~ああ~ああ~ああああああ~。ジュリーの「サムライ」も、この映画からインスピレーションを得たみたいっすよ。


 

ジョセフ・ロージー『パリの灯は遠く』,1976年,フランス/イタリア,DVD

ドイツ占領下のフランス。美術商ロベール・クラインは、ユダヤ人から美術品を安く買いたたいて儲けていた。ある日、郵便物から同姓同名のユダヤ人と間違えられていることを知り、身の潔白を証明するためユダヤ人クラインを探し始める。折しも、ヴィシー政権はユダヤ人大量検挙を準備していた…。
1942年のヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件がモチーフ。ヴィシー政権が大規模なユダヤ人狩りを計画実行し、約1万3千人ものフランス在住ユダヤ人をアウシュビッツ等の収容所へ送り込んだ事件(ヴェロドローム・ディヴェールは競輪場の名前だけど、その理由は映画を見るとよく分かるよ)。
まず、1970年代に、フランス政府が90年代半ばまで否定しつづけたこの歴史的汚点事件を、ほぼ再現するかのようなリアルさで描いたことがすごい。そこに、クラインがユダヤ人クラインを探すというサスペンスフルなストーリーを絡ませて、観客を歴史舞台に引きずり込み、クラインが差別する側から差別される側へとあっという間に陥れられることで、明日は我が身じゃないけど、どの時代だってこういう理不尽な悲劇は決して他人事ではないこと、差別がいかに無意味で不毛かということまで考えさせる。冷静に判断したらやめときゃいいのに、クラインがもう一人の自分探しをやめられないというのは人間の本能なのでしょう…運命は皮肉。
私が最初に見たジョセフ・ロージー&アラン・ドロン映画は『暗殺者のメロディ』('72)だった。ドロンの演技は良いのですが、これがまぁ退屈な映画で(笑)。正直、『パリの灯は遠く』も期待してなかったのですが、一瞬たりとも退屈しなかったし、反ナチ映画としても、サスペンスとしてもよく出来た映画だと思います。

 

2017年後半の映画メモ(3)

俳優はゲイ役で真価が問われる!
という映画友だちの格言に従い、おすすめの2本を鑑賞。1本はアル・パチーノ。もう1本は、本年度アカデミー賞主演男優賞を獲得したゲイリー・オールドマン&怪優アルフレッド・モリーナ。


ウィリアム・フリードキン『クルージング』1980,アメリカ,DVD

ゲイだけを狙った連続殺人事件が発生。警官スティーブ(アル・パチーノ)は囮捜査を命じられ、ハードゲイの世界へ潜入する。ハードゲイを世界に知らしめた映画としても有名。Cruisingは、ゲイ用語で男あさりの意味。
めくるめくハードゲイの花園。撮影にあたって、エキストラは全員本物を集めたらしく、マッチョな男たちの汗の臭いまで漂ってきそうな映画。
本作は、普通の青年がハードゲイの世界に魅入られていく過程が主テーマであって、殺人事件の犯人捜しはそのきっかけや環境を与えるためのサブストーリー。なので、見どころは、やっぱり主演アル・パチーノの変貌。彼の目つきが、犯人を探す捜査の目から、シーンを重ねる毎に、男をあさるような、ねちっこいギラギラした目に変わっていくですよ。殺人事件の真相より、え?捜査でゲイのフリしてるけだよね、あれ?もしかしてそっちの世界に行っちゃったの?!って方が、気になって仕方がない。ラストも意味深。殺人事件は解決しても、スティーブがそっちに行っちゃったかどうかは謎のまま。モヤモヤ~。
あと、どうでもいいけど、警察での取調べ中に唐突に出てきて、容疑者を殴り倒すテンガロンハットの人が謎すぎる。あれは何?。自白強要要員だとしても、なにゆえにあの格好なの?。知ってる方がいたら教えてください。

 

スティーブン・フリアーズ『プリック・アップ』,1987年,イギリス,DVD

実話が元ネタ。1960年代ロンドン、ゲイであることが犯罪だった時代。演劇学校で知り合ったジョー(ゲイリー・オールドマン)とケネス(アルフレッド・モリーナ)。作家を目指していたケネスはジョーに文学の手ほどきをし、生活も支えた。しかしケネスは芽が出ず、一方でジョーは劇作家として成功の道を歩み始める。
ケネスが糟糠の妻に見えてきたよ…。ケネスは才能もなく夢も叶わず、ハゲでデブで容姿も衰え、なのにジョーは一躍時の人となり、パンツまで洗ってあげているケネスのことをほったらかしにして、浮気三昧。愛した分だけ愛が欲しいケネスと、重い愛はウザいジョー。ケネスの劣等感や嫉妬や嫉み、愛の苦しみは、”ゲイだから”ってわけじゃない。だれにでも、私にもあるから切なくなるの。『クルージング』のような異世界を見る感覚はまったくなかったよ。ゲイのカップルの愛憎も、男女とそんなに変わらないんだなと。
ジョー役のゲイリー・オールドマン、かわえぇ。目つきまで色っぽくて、本当にゲイにモテそう。でも、どっちかというと、私が印象に残ったのはケネス役のアルフレッド・モリーナ。ケネスは、繊細で複雑な心情を持つ難しい役だと思うけど、痛々しくて、見ているのが辛くなるような迫真の演技だった。
本作を含めて二人とも若い頃はクセのある役が多かったけど、最近では味わいのある大俳優になったねぇ、しみじみ。

 

 

 

 

 

 


オマケ 
最近のゲイリー・オールドマンと、アルフレッド・モリーナ。
左の画像はオスカーを獲得した時のゲイリー・オールドマン。右は『人生は小説より奇なり』(2016)のアルフレッド・モリーナ。アルフレッド、この映画でもゲイ役をやっていて、相手役はジョン・リスゴーなのですが…。なんか劇作家として大成したジョーと、実は新しいパートナーを見つけて幸せになったケネスみたいな感じになっちゃいました(笑)。

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