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4月の映画鑑賞メモ

ダーレン・アロノフスキー『レスラー』,2008年,アメリカ=フランス,録画

泣かせるんだよなぁ、男の背中。『ロッキー』が若者の夢なら、『レスラー』は去りゆく者の哀しみかな。大人が泣ける映画。
ランディは仕事バカだ。仕事では後輩や仲間から尊敬され、ファンにも慕われているけど、リングの外に生きる場所を作れなかった。真面目で良い奴なだけに、その不器用さがとても切ない。だれでも一線を退く時はくるけど、プロに徹する者ほど、仕事以外のすべてを犠牲にするから、外には居場所がないのかも。カメラが手持ちで、ランディの背中を追いかけるようにして撮影したカットを多く使ってるけど、もう、その背中が惨めで、わびしくて、悲しい。ラストシーンで、ランディがオレの居場所はここしかないっていう顔をチラリと見せるが、このミッキー・ロークの繊細な演技は素晴らしすぎて、涙腺崩壊(T-T)。
そして、あのミッキー・ロークがプライドを捨て、変わり果てた姿をさらしている。80年代、彼がまだシュッとして、超イケメンで、傲慢だった頃の全盛期を知る者としては、自然と、彼と過去の栄光にすがる落ちぶれた主人公が重なって見えてきて、ますます泣けてしまう。彼はこの役に出会うために、落ちぶれ時代に、カッコ良かった顔と体を捨てたんじゃないかと思えてくるほど。主人公ランディは、ミッキー・ロークでなくてはならなかった。
同監督の他代表作は『ブラックスワン』。仕事を極める者っていう点では共通してると思う。

 

クリント・イーストウッド『ジャージー・ボーイズ』,2014年,アメリカ,下高井戸シネマ

ミュージカルの映画化。60年代半ばに大活躍したポップスグループ、フォー・シーズンズの結成からメンバーの亀裂、和解までを描く。タイトルはメンバーがニュージャージー出身だから。えっ、クリント・イーストウッドって、こんなに楽しい映画も撮るんだ!と、ちょっと驚き。80才を過ぎた大御所監督の新境地を見た感じがした。
アメリカでの評価はいまいちだったらしい。やっぱりイーストウッドというと『アメリカン・スナイパー』的なものを期待されちゃうのかな。イーストウッドの音楽好きは有名だし、簡単には割り切れないメンバーの複雑な心情や葛藤を丁寧に描いていくとこなんか、私はイーストウッドらしいなぁと思ったけど。一方、日本では2014年キネ旬ベスト1になるなど、評価はまずまず。傑作とまではいかないかもしれないけど、フォー・シーズンズの名曲に彩られた素敵な人生賛歌映画だと思う。
元々ヒットしたミュージカルということもあって、脚本と構成が良い。フォー・シーズンズというバンドの一生を、春(駆け出し)→夏(全盛期)→秋(メンバーの亀裂)→冬(フランキーソロ時代とメンバーの和解)という4部構成にして、4人のメンバーが代わる代わる語り手になり、それぞれのメンバーから見たフォー・シーズンズという視点も加えられる。誰が欠けても、フォー・シーズンズの成功はなかった。気持ちが離れたとしても、ぎりぎりの一線で仲間を決して見捨てないジャージー・ボーイズ魂、人生は酸っぱさ苦さも含めて素晴らしいんだと思わせてくれるラストシーン、感動と幸福感に包まれる。
舞台を務めた俳優が、映画版にも出演しているので、音楽も素晴らしい。フォー・シーズンズを応援するマフィアを演じたクリストファー・ウォーケンもなかなかチャーミング

 

キャメロン・クロウ『あの頃ペニー・レインと』[特別編集版],2000年,アメリカ,録画

15才でロック雑誌のライターになった監督の自伝的映画。ロックバンドのツアー同行取材の旅で、主人公ウィリアムの青春の扉が開かれていくロードムービー。時代は70年代。若者の自由と反抗の象徴だったロックが商業主義になったと批判されはじめた時代でもあり、スティールウォーターという架空バンドを通して、金に魂を売らざるを得なくなっていくロックの変化、ドラッグ、女、酒…業界の裏側も同時に描かれていく。
優等生少年がはじめて見る刺激的すぎる世界、憧れと自由の象徴だったロック界の大人の事情、失恋、仕事の厳しさ…。私は彼ほど冒険はしてないけど、大人世界へと足を踏み入れていく時のはじめて体験の新鮮さと驚き、ほろ苦さが入り混じったような感覚はなんか分かるなぁ。ペニー・レインはビートルズからだと思う。過ぎ去った日々を懐かしむ曲を名乗る女の子は、彼の甘酸っぱい青春の思い出の象徴であり、また、自由と反抗精神を持っていた頃のロックの象徴でもあるのだろう。
物語自体は淡々と進むが、この監督は、セリフも演出もセンスが良くて、クスッとしたり、じわじわっとしたり、一つ一つのシーンがとても印象に残る。例えば、厳格な母親に耐えられなくなった姉が、11才のウィリアムに「ベッドの下で自由を見つけて」と耳打ちして家出をするんだけど、彼がベッドの下を探ってみると、そこには姉が残していったレコードの数々。サイモン&ガーファンクル、レッド・ツェッペリン、クリーム、ボブ・ディラン、ザ・フー…少年の目が輝いていく。少年をロックの世界へ誘っていく導入シーンとして洒落てるなぁと思う。他にも紹介したいセリフやシーンはいっぱいあるけど、このくらいにしとこ。
70年代ロック名曲と、監督が実際に体験したエピソードのオンパレード。ロックを知る人が見たら、もっと楽しめると思う。映画のなかで、「ミック・ジャガーが50才になっても歌って踊ってると思うか?」という台詞があるけど、実際、70過ぎても歌って踊ってるし、思わず笑っちゃったよ。