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11月の映画鑑賞メモ

クエンティン・タランティーノ『ジャッキー・ブラウン』1997年,アメリカ,DVD。
天才。大して内容がないのに、ここまで面白くできるって凄い。タランティーノお約束のヴァイオレンスもなし。50万ドルを誰が手にするのか、駆け引きの面白さと人物のキャラクターだけで2時間30分を引っ張ってしまう。ショッピングモールで紙袋をすり替えるたったこれだけのシーンを緊張感いっぱいに盛り上げられる監督はそうそういないと思う。タランティーノにしては地味だけど、だからこそ純粋に彼の「映画的面白さ」に対する感覚の鋭さとか才能を感じることができる映画。パム・グリアはじめ、サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・デ・ニーロまでもが安っぽい感じなのが良いんだな~。

ゲイリー・マーシャル『恋のためらい フランキー&ジョニー』1991年,アメリカ,wowow
アル・パチーノ&ミシェル・ファイファーの『スカーフェイス』コンビ。過去のある男女のラブストーリー。ストーリー自体はベタだけど、二人の気持ちを表す演出やセリフが洒落ていてセンスが良い。都会の片隅の大衆カフェ。孤独にひとり死んでいく年老いたウェイトレス、20代で脚本家へのチャンスをつかむ若者コック、その間にいるウェイトレスのミシェル・ファイファー。このままいったら先輩ウェイトレスと同じ道、かといって、年齢的に新しい夢を追うのも難しい、30代半ばという微妙な年齢の女心がよく分かる。私も30代半ば、あーなんか人生の選択肢の幅が狭くなったなーと実感したことがあったから。まだ人生を変えられる年齢ではあるし、このままじゃダメだと分かってはいても、夢を追うにも、恋をするにもハードルが高くなってなかなか一歩が踏み出せない、その「ためらい」がリアル。
気になって監督を調べたら、前の年に『プリティ・ウーマン』を大ヒットさせてた。確かに、映画作りのセンスは同じだけど、私は『プリティ・ウーマン』より『恋のためらい』の方が断然好きだ。金にモノ言わせるリチャード・ギアより、貧乏でも、前科者でも、この人が好きだー!幸せにしたいー!と、下手すればストーカー一歩手前まで突っ走っていくアル・パチーノの方がステキだもん。『プリティ・ウーマン』の方がヒットしたのは、バブルという当時の日本の世相が大きいだろうな。今だったら、『恋のためらい』の方がヒットするような気もする。

吉田大八『桐島、部活やめるってよ』2012年,日本,wowow
最近の邦画ではBest1。監督は、ガス・ヴァン・サント『エレファント』(2003年)を参考にしたのは間違いないと思う。閉鎖的な学校社会に、自然とできあがってしまうヒエラルキーがあって、それぞれが自分の立ち位置を自覚して、秩序を乱さないように最新の注意を払いながら人間関係を築いている。でも、このヒエラルキーは学校以外では通用しないということにも一部のバカ以外はみんな気づいていて、上のヤツは不安になったり、下にいるものはコンプレックスに押しつぶされそうになりながら踏ん張ってみたり。ヒエラルキーそれぞれの階層の視点から、思春期の言いたくても誰にも言えない微妙な心のうちが繊細に表現されていく。
wowowの「W座の招待状」という番組枠だった。映画の後に二人の案内人(放送作家とイラストレーター)のトークがあるんだけど、いっつも的外れなんだよなぁ。今回に限らず。もしこの高校生たちのピリピリした感覚が分からないと言うなら、それはそれで幸せな学生時代だったんだろうし、ある意味うらやましいわ。

ジョン・アーマン『ステラ』1990年,アメリカ,wowow
長年見たいなと思っていたけど、DVDが十年以上前に出て廃盤になってしまっていた。90年代の名作。娘が幸せになりかける→親の品のなさや教養のなさが周囲から誤解を受けて、娘が辛い思いをするという同じようなエピソードの繰り返しでクドさを感じながら見ていたけど、でも最後、だからこそステラにはあの選択以外はなかったことがぐっと真に迫ってきて、親って辛いなぁと涙が出そうになった。子供の幸せ=親の自己犠牲度なのかもしれない。ステラのような貧困家庭ならなおさら。この映画が公開された頃、80年代末~90年代初頭はアメリカで所得格差が先鋭化した時代でもあった。アメリカンドリームの国といわれてるけど、厳然とした階級社会であって、上層の底辺層への偏見、底辺から向け出すことの難しさも感じた。