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モーリス・ジャール死去

先日、新聞の追想録コーナーで、モーリス・ジャールが3月に亡くなったことを知った。映画音楽作曲家の巨匠である。代表作は、デビット・リーン監督と組んだ「アラビアのロレンス」、「ドクトル・ジバゴ」、「インドへの道」、「ライアンの娘」。他には「ブリキの太鼓」、「史上最大の作戦」、「パリは燃えているか」など。堅い文芸作から娯楽作まで、多才な作曲家だった。当サイトCinemaDiaryに取り上げた、たかが100本程度の作品のなかにも、彼の作曲が「ドクトル・ジバゴ」、「シベールの日曜日、「大列車作戦」、「ロイ・ビーン」と4作品も入っている。
最近の映画音楽は、効果音と変わらなくなっているような気がする。上手く言えないけれど、旋律より、リズムが強調されている感じ。例えば怖いシーンでは、音をあまり使わず、低い音を、心拍数と同じぐらいのリズムで、単調に続けるとか。勇ましいシーンでは、パーカッション、金管を派手に使ったオーケストラで、荘厳に音をじゃがじゃがと音を重ねるとか。効果音的音楽は、とくに音楽音痴の私なんかには、どれも似たり寄ったりに聞こえてしまって、印象に残らない。
映画音楽は、その曲を聴いたら、映画のシーンがふわーーっと思い浮かぶというのが、名曲だと思っている。例えば、「ドクトル・ジバゴ」のラーラのテーマ。バラライカのシンプルな響き、幸福感に満ちた美しい旋律。映像やストーリーと合っているかというと、そうでもない。ラーラの母が自殺未遂した後のシーンとか、今生の別れのシーンで流れたりするから。でも、そのメロディが流れると、ラーラの可憐だったり、うちひしがれていたりする姿が、ジバゴが彼女を思い出すのと同じような気持ちで、思い浮かんでくる。
そうした名映画音楽をたくさん残した作曲家だった。残念である。

AFI アメリカ映画ベスト100

AFI(アメリカ映画協会)が、10年ぶりに、アメリカ映画ベスト100を発表した。候補作品400作から、映画関係者1500人の投票により決定される。ベスト10は下に挙げた通り。()は、1997年の順位。
『Newsweek 5/5-13日号』で、このAFIベスト100の特集が組まれていた。「不朽の名作にだまされるな」と、刺激的なタイトルはついているものの、個人的な映画の好みを基準に、100位に文句つけてるだけに見える。映画オタクのblogと変わらない。個人的には駄作と思っても、「不朽の名作」として映画人に支持されるのには、それだけの理由があるのだから、評論家ならそこを掘り下げて欲しい。
私もそうだけれど、映画人がベスト100を選ぶ場合、多分、個人的嗜好は二の次、客観的に見て、映画史上、テーマ・ストーリー・技法などが画期的で、映画の新しい流れを作った作品、また完成度が高い作品などを選ぶと思うのだ。
例えば1位の『市民ケーン』。面白いかどうかと言われれば、答えに困る。しかし、パンフォーカスなどの画期的な技法、カメラワーク、画面構成の面白さ。いろんな人が、ケーンをバラバラに語っていくが、それが最後にピタッと一つの人生として完成する醍醐味、構成の素晴らしさ。そして、「薔薇のつぼみ」というたった一言で、物語の情感、余韻を一気に沸き立たせる凄さ。そんなことを考えると、私は、この1位は納得である。
『タイタニック』、『ロード・オブ・ザ・リング』などが、新たに100位入りしたことに文句をつけるだけでなく、なぜこういう作品がランクインしたのか。映画史からみて、これらの映画が評価される点は何か。また『ジャイアンツ』、『ドクトル・ジバゴ』、『ベン・ハー』が順位を落としたことをよろこぶだけでなく、なぜ、大河ドラマが、軒並み順位が落としたのか。『キートンの将軍』、『イントレランス』が選ばれるのはおかしいというだけでなく、なぜ今更サイレント映画が大幅順位アップしたのか。これらの100位から、近年のアメリカ映画の動向、評価される作品の分析など、もっと論理的に解説してほしい。辛口だけじゃ、もの足りない。
また、AFIはいくらか教育的、健全な映画に偏りがちなところなども考慮しなければいけないと思う。反道徳的な作品、例えば『タクシードライバー』が52位と低いことや、『ミスティック・リバー』が100位に入っていないと、AFIに吠えてもなぁ…ないものねだりという感じもする。機関の性格から、そういう名作の評価が低くなりがちだと評論すればいいような気がするんだけれど。
今回のBest10で、未見なのは4位、マーティン・スコセッシ『レイジングブル』、9位、ヒッチコック『めまい』。いずれも10位内では、10年前に比べて、大幅に順位が動いた作品である。
『レイジング・ブル』は、以前から、見なくちゃなーと思っているが、だらだらと見逃している。「無冠の帝王」と言われたスコセッシ。2006年『ディパーテッド』なんていうリメーク映画で、アカデミー賞監督賞を受賞したことなどを考えても、最近、再評価されているのかもしれない。
映画好きとしては恥ずかしいが、ヒッチコック…実は数えるほどしか見ていない。どれを見ても面白いのだが、代表作を数本見ると、もういいか…となっちゃうのはなぜだろう。
1位  『市民ケーン』  (1位)
2位  『ゴッド・ファーザー』 (3位)
3位  『カサブランカ』  (2位)
4位  『レイジング・ブル』  (24位)
5位  『雨に唄えば』  (10位)
6位  『風と共に去りぬ』  (4位)
7位  『アラビアのロレンス』  (5位)
8位  『シンドラーのリスト』  (9位)
9位  『めまい』 (61位)
10位 『オズの魔法使い』 (6位)

4月の映画鑑賞メモ

アン・リー「ラスト、コーション」,2007年,アメリカ・台湾,wowwow録画。
サム・ガルバルスキ「やわらかい手」,2006年,イギリス=フランス=ベルギー=ドイツ=ルクセンブルグ,wowwow録画。
>「ラスト、コーション」
R15指定。久しぶりの拾いモノ(^^)v。かなり良い。
この監督は、相変わらず、ピントが浅いアップを多用する。導入がもたつくのがチョット残念だが、話が進むほど、引き込まれていく。トニー・レオンが、こんなに良い役者だったなんて知らなかった。ラスト=lust。
>「やわらかい手」
こっちもR15指定。孫を助けるためという、心温まる導入から、しだいに職業を持つことによる女性の自立がテーマになっていく。
残念なのは、音楽が良くないこと。ベースを効かせた単調な音楽が、全体のトーンを暗く、陰鬱にしてしまっている。
そうかぁアレは、東京発だったのかー(笑)。

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